観光庁による解説文
多聞院と鐘楼
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この仏教寺院の鐘楼は、原爆爆心地の東1,750メートルに位置し、全壊を免れた木造建築のなかで爆心地から最も近くにある建物です。多聞院の山門と主要な構造物のひとつである毘沙門堂は爆風によって倒壊し、本堂や庫裡もひどく損傷しましたが、鐘楼は、木製の梁が引き裂かれ屋根が破壊されたにもかかわらず、何とか建っていました。原爆当時、塔には実際の鐘はなく、この巨大な道具は青銅が貴重であったため軍当局により押収されていました。
1949年8月5日、被爆者の家族の働きかけにより、新たな鐘が除幕されました。平和の鐘として知られるこの鐘は、爆心地に近い土壌から採取した砂を一部使って鋳造されており、広島市上空に浮かぶ仏教における慈悲の菩薩である観音様のレリーフと「No More Hiroshimas」の碑文が刻まれています。その他にも、意味を持つ碑文がいくつか鐘を飾っています。鐘楼の屋根は取り替えられ、寺院自体も再建されており、現在、これらを永久に保存しようとしています。鐘は毎日、原爆投下時刻の午前8時15分に鳴らされ、その深い音色には、爆弾により失われた多くの魂への心からの祈りと、人類が世界平和を達成することへの願いが込められています。