リニューアルした広島市現代美術館へ―
寺口淳治館長 インタビュー
約２年３カ月にわたる大規模改修工事を経て、新しく生まれ変わった広島市現代美術館。
公立としては国内初の現代美術を専門とする美術館として1989年5月に誕生。
“ヒロシマ”との関連を示す作品を中心とする現代美術作品の収集とともに、多種多様な活動を展開してきました。
リニューアルオープンした美術館への思いを寺口淳治館長に伺いました。
今回のリニューアルの概要について
今回の改修工事では、本館を設計した建築家・黒川紀章氏による意匠を出来る限りその
まま残しつつ、経年劣化した箇所の「機能回復」と、これからの美術館に求められる機能を
追加する「機能拡張」が行われています。
基本は、３４年前に誕生した時の状態に戻したところが８割、９割。３０年経つと、どうしても傷んだり、汚れたりという部分もあり、それらを当時の状態に戻すということをやりました。
もうひとつは、エントランスホールの横に、200平米ほどの新たなスペースを増築。ガラス張りの陽光がふりそそぐ空間をこしらえていただいて、展覧会をみるだけじゃなくて、なんとなくふらっと来て、座って、みたいなことができる場所にできればいいかなと思っています。
設計者、黒川紀章氏の思いを継承する
日本を代表する建築家、黒川紀章氏の設計。今回の改修では、黒川氏の思いを形にした広島市現代美術館という作品を後世に伝えていくべく、極力オリジナルの意匠を残す形で進められました。
黒川紀章先生は、平和記念公園、平和記念資料館を設計した丹下健三さんのお弟子さんなんですよね。
この建物を建てるにあたっては、もちろん、広島という土地であったり、平和であったりということも考えて作られたと思いますし、偉大な建築家である丹下先生の影響も、たくさん受けています。例えば、アプローチプラザの円形屋根の切込みが爆心地の方角を指していることをはじめ、丹下先生の思想に共鳴するような部分もあります。
黒川先生自身、この建物はものすごく大切なものとおっしゃっていて、自分の代表作だと書き残しておられます。この建物を残すということは、黒川先生が考えていた思想を後の人々に伝えていけることになるのではないでしょうか。
比治山というロケーション
市街地を一望できる緑豊かな比治山公園に位置する広島市現代美術館。
“街中の雰囲気とは違う、あまり手の入っていない森、鬱蒼とした緑の中で過ごせるというのは、都市にいる人たちにとって、非常にホッとできる場所になるのではないでしょうか。
外国の方々もずっと新幹線に乗ってきて、街中のホテルに泊まって、街中でごはんを食べて、ということを繰り返すわけですから、そういう中で、少しでもリラックスできる場所になればいいんじゃないかという気がします。
ふもとからは、スカイウォークという動く歩道もついています。お休みの日に少し心の余裕をというか、自分自身をリフレッシュさせるために来ていただけるとうれしいです。
リニューアルオープン記念特別展「Before/After」について
会期／3月18日(土)～６月18日（日）
美術館の改修工事という出来事を契機に生じる「前／後」をひとつの足がかりとして、さま
ざまな「まえ」と「あと」の現象や状況に着目。これまでに収集してきたコレクションを軸に、
45名／組のアーティストによる約100点の作品を紹介。
今回のリニューアル特別展では、この展覧会のために9人の作家が新しい作品を作って
下さっています。今彼らが置かれたこの世界の状況であったり、この広島の地であったり、
現代美術館というものであったり、ということに対する何らかの思いをそこで表現して下さ
るはずなので楽しみにしていて下さい。
アクセス
平和記念公園から広島市現代美術館までは約２km。
広島駅新幹線口から市内中心部の紙屋町や八丁堀、広島城や原爆ドーム・広島平和記
念資料館前などを循環するバス「めいぷる～ぷ」（オレンジルート）が観光には便利。
これからの季節は、さわやかな風を感じながら、シェアサイクル「ぴーすくる」で散策しなが
ら訪れるのもオススメ。
【広島平和記念資料館から広島市現代美術館までのアクセス】
広島観光ループバス めいぷる～ぷ（オレンジルート）で約１５分
広島観光ループバスめいぷる～ぷ
http://www.chugoku-jrbus.co.jp/teikan/meipurupu/
【広島平和記念資料館から「比治山スカイウォーク」下まで】
広島市シェアサイクル ぴーすくるで約１５分
※比治山の山頂にもぴーすくるポート（比治山公園ポート：広島市現代美術館まで約100m）があります。
広島市シェアサイクル ぴーすくる
https://docomo-cycle.jp/hiroshima/