sokoiko! Hiroshimaのピースサイクルツアー
「ここにしかないストーリー」を伝える自転車ツアー
広島の平和記念公園内のレストハウスから、平和記念公園を飛び出してシェア自転車で郊外を巡るツアーがある。sokoiko!が提供する「ピースサイクルツアー」だ。
戦前の広島から、戦中、被爆を経て戦後の復興への流れを、ツアーを通して肌で感じられるよう設計してあり、一度は焦土と化した広島の街がどのように今の姿になったのかを知ることができる。
友達を案内するように、自分自身の言葉でゲストをもてなすのがsokoiko!のコンセプト。ガイドブックの情報だけでなく、ガイド自身の体験や気持ちを話す「ここにしかないストーリー」を伝えているのが、ゲストの感動を呼び、口コミで利用者がどんどん増えている。
ピースサイクルツアー体験
平和記念公園のレストハウスでガイドと合流し、まずは平和記念公園のモニュメントを案内してもらう。
今更ながらハッとさせられるのは、この美しい公園はもとから公園だったわけではないという事実。1945年8月6日の朝までは、ここは賑やかな繁華街だった。ガイドの説明を聞いていると、ざわざわとした喧騒が耳に聞こえてきそうな気がしてくる。
平和記念公園そのものが一つの町だったこと、そして一瞬で町ごと焼き尽くされ、灰となってしまったことなどを聞き、そこに住んでいた人々のことを思い胸が締め付けられる。
シェア自転車に乗り込み、郊外へ飛び出す。川沿いや公園を通りながら、街並みに溶け込む被爆建物や被爆橋梁、被爆樹木などを巡る。広島の街は国内でも有数の大都市となり、街並みは美しく整備され、焦土と化した面影はみじんもないように思える。だが、あちらこちらに当時の悲惨さを伝える記録が残されている。
やはり心に残るのは、ガイド自身の経験や家族から聞いた被爆体験だ。ガイドによって、それぞれが持つ経験やストーリーはさまざま。ガイド自身の言葉で案内することを大切にしているので、sokoiko!のツアーはガイドによって伝える言葉はさまざまだ。
sokoiko!代表の石飛聡司さんは、「ピースサイクルツアー」に参加した人には、ここまで再生した広島の街並を見てもらい、それぞれの人生の中で困難に遭った時には、広島の街を思い出してあきらめない勇気を持ってほしいと語る。ツアーの最後には、未来への希望を語るしめくくりが用意されている。
コロナ禍での試行錯誤
2020年春、石飛さんは平和記念公園の桜を見ながら絶望を感じたという。前年の同時期、桜並木は歩けないほど花見客でひしめきにぎやかだったが、その時は満開の桜の下には誰もいなかった。いいようのない不安を感じ、新型コロナウイルスの影響下では旅行・観光業はもうダメかと思ったという。
しかし、同時にいつも自分たちがゲストに伝えている「辛いときほど広島の底力を思い出してほしい」というメッセージを思い出し、ここで自分たちがくじけては絶対にいけないと思いなおした。
sokoiko!はまたゼロからの出発となったが、創業当時と違うのはたくさんの仲間がいたこと、さまざまな経験を積んだこと、観光業関係の強力なネットワークが構築できていたことなど、心強い味方も多かったことだ。
2020年、sokoiko!は新しいことにチャレンジし続けた。
オンライン修学旅行
修学旅行が開催できない学校に向けて、オンラインで広島をツアーする「オンライン修学旅行」を創った。リアルタイムで現場から案内するガイドに、バーチャル背景を駆使した臨場感のある動画資料を組み合わせた。子供たちの興味を引き付けるよう、仲間と意見を交わしながら創意工夫した。
どうせやるからには、「しかたないからバーチャル」ではなく、バーチャルにしかできないことをやっていきたいと石飛さんは言う。被爆電車に乗り込むバーチャル体験や、原爆ドーム内部からの案内など、リアルのツアーでは実現できないことをどんどん盛り込んでいきたいと意欲を燃やしている。
sokoiko!を全国、世界へ
もう一つ、力をいれているのがsokoiko!ツアーの全国展開だ。すでに東京、江田島にもツアーを展開している。2021年4月からはsokoiko!長崎がスタートする。
フランチャイズ形式で、ノウハウ伝授やルート造成には携わるが、運営は地元スタッフに任せる。地元の人々だからこそ伝えられるストーリーを大切にしたいからと言う。
今後の展開について
これからは「広く届けていく」ということをやりたいですね。国内でも海外でも、どんどん「sokoiko!」というブランドツアーを増やしていきたいです。
また、オンラインツアーもいろいろな方に届けたいです。たとえば、病気で寝たきりになってしまった方にもツアーを届けられるようにしたいです。
「広島の役に立ちたい」という思いで必死でやってきましたが、これからも試行錯誤しながら新しいことにチャレンジし、広島に貢献したいと思います。